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2004年10月06日

ギル君

アップルに昔ギル・アメリオ君というCEOがいた。
彼のいた頃のアップルは最高だった。サイバードッグやオープンドック、ニュートンメッセージパッドなどアップルの将来を思わせるものがたくさんあった。

しかし、今振り返るとその後のMacOSXのデザインのエレガントさ、堅牢さ、信頼性、そういうものを考えるとギル君にはそういうセンスなかったように思う。たとえそれがOpen Stepのエンジニアのもたらしたものであっても。ギル君にはそういうものを強力にピックアップし継続して育てるところに興味はなかった、と「アップル薄氷の500日」を改めて読みそう思う。

この本と彼の性向はビジネスであってプロダクトでないことがわかる。
アップルの存在意義は?と聞かれて、「野党だ」とか答えているあたり、なんのことかわからん。
もちろんGUIを使いやすくしたり、安定したシステムを作るべく努力したのだが、努力しても何も始まらなかった、という結果として愚痴がたくさん書かれている。結果として、というのは今はそれらを得たから愚痴になってしまうのだ。ここらへん当時はなにも変わらなかったから愚痴にも聞こえず、どうしてギル君が続投しなかったのか、と残念だったように感じたのと私の方が大きく違っている。

今のCEOなら、最高のPCを作る。一番使いやすいユーザーインターフェースを作る。などと技術、製品が最高と言う。シンプルである。だから、私の行動指針もそういう方向にあわせた方がよいことを学べる。あなたは何をなんのために研究しているのか?と問われたときにそのように答えるのがよい。

ギル君から大きく変わったのは音楽事業だろう。iTunesとiPodの成功。iPodがあれこれいわれるがiPodのシンプルさを成就させるためにiTunesが最高のソフトとなっている。レビューではハード面ばかりふれられているのが残念である。

iTunesのインターフェースが徐々にファインダーにも適用されてきたのも面白い。ここらの「大人」のインターフェースを見るとMacOS9のときはなんだったんだ、と思う。どうしてこれで満足できていたのか。

何もないところに作っていくのは難しいが、できてからたかるのは簡単である。せめて自分でなにかつくろう。

とはいえギル君の本は現実のお金の計算の仕方を教えてくれるすばらしい本である。いや、これは嫌みでなくて。仕事でもお金を配分したり、購入したりするときに何にどれだけ、という現実がまっていて、私のような人間には経験がなくて判断基準がない。すくなくともこの本を読めば、算出根拠を学べる。桁は激しく大きいが。

というわけで運営しようとするなら明確なビジョンを持とう、ということで一つ。

もう一つ、私の気に入っているフレーズは「必要性」である。必要は発明の母。まさしく。必要は現実の研究を行う上で非常に強力な推進原理である。これに絞り込めばほとんどの介入を拒否しなくてもそれだけで進んでいってしまう。真に先進的な研究の進展はそうもいかない。別の才能である。たぶん。

投稿者 iida : 2004年10月06日 03:04