« ニュースなど | メイン | RedHat Linux その3 »
2003年09月27日
歌付き叙情組曲
私がどれだけ叙情組曲に対して深い愛情をもっているか私はそれほど語らなかったかもしれない。この曲はベルクの変質的ともいえるような不倫の愛の告白でもある。不倫であることが許されるかどうか、どの程度の不倫であるかどうか、そういったことは生まれて独自な道を歩み始めた作品にはあまり関係ない。芸術作品が由緒正しいかどうか、そういうことはあまり問われないし、同様に演奏家が品行方正であるかどうかはあまり関係ない。舞台でインパクトがなければそれまでなだけである。
ベルクの叙情組曲は私のようにスコアを読めないくせに見たがるものにも至福の時を味あわせてくれた。跳躍が多いし、特殊奏法も豊富でおっかけやすい、加えて彼の音楽の漆黒のなかでレーザービームが飛び交うような超モダンな音響と相まってスコアを何度も見ながら聴いた。
この曲は、無調と12音を章ごとにわけていて、ベルクにとっては12音ではまだ難しいので「やる気をなくさないように」無調でも書いていたということである。
スコアを見たかった理由に、叙情組曲の名の由来であるツェムリンスキーの叙情交響曲の引用(「叙情交響曲」の中のタゴールの歌詞「わたしはあなたのもの、あなたはわたしのもの」)およびワグナーの「トリスタンとイゾルデ」の引用がある。アドルノはなんらかの愛に言及した作品であることを論文に書いていた。ベルクの愛した女達と音楽の関係
終楽章はボードレールの詩の引用である。
|お前に、唯一愛するお前に向かって
|この心が落ち込んだ深い谷間から私は叫ぶ。
|そこは死の国だ。空気は鉛のようであり、
|闇の中に呪詛と恐怖がたぎる。
これが実は歌付き自筆書き込みスコアとして残っていて最近発見された。演奏は以前BBCのビデオで、あるかたからいただいたもので見た。詩の内容からして濃いがいっしょに歌われることで、その官能性はいやがおうにも高まる。シェーンベルクの弦楽四重奏2番も妻の不倫などがあり、追いつめられた彼が新たな芸術を創出したスナップショットであるが、その詩(シュテファン・ゲオルグ)の内容は神秘的なものを選んでいるのとは対照的である。
それで歌付きもCDが欲しいと思っていたがなかなか実現しなかった。それがクロノスカルテットとドーンアップショウの組み合わせで実現したと、まっちゃんのサイトで紹介されていた。Trans weblog::Berg: Lyric Suite。私も是非購入せねば。
投稿者 iida : 2003年09月27日 01:54
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.greengrape.net/cgi-bin/MT/mt-tb.cgi/448
コメント
歌付き叙情組曲のCDとしては、以前にプラジャーク四重奏団の録音が出ています(歌手はVanda Tabery)。このCDでは通常版最終楽章の録音の後に、歌付き版が録音されています。
クロノス&アップショウのCDも聴いてみたいところですね。
投稿者 ふてん : 2003年09月27日 21:44