『身辺怪記』  板東 眞砂子 著  角川文庫

以前、ご紹介した『死国』の作者のエッセイです。
板東氏の作品は流血ドバドバーのスプラッタ的な怪奇小説でなく、例えて
いうなら日本家屋の中、ロウソク1本皆で寄り添って話す怪談のように、下
の方からゾワゾワっと冷たいものがのぼってくるような、それでいてどこか
郷愁を誘う物語が多いので、私も好きなんです。

題名をみて「そうか、やはり怪奇モノを書くとなると色々起こっちゃうのね」
とわくわくして購入。
不思議だねという話も当然書かれていますが、板東氏の故郷・高知にまつわる
エピソード、文化、旅先の風景、日常感じたこと、学生時代などなど盛り沢山
の1冊です。
作品だけを読むと、板東氏のイメージ=着物・結い上げた髪・物静か・正座
で筆を執る(そんな作家いまどきいないか ^^;;;)など、どこかミス
テリアスな女性作家なのかなあと想像するのですが、いやいや、板東氏は
とってもチャーミングな方です。

気に入った話を少しご紹介(イメージ違ったもん)。
子供時代、チョコレートが宝物だった板東氏は「一度に沢山食べたい」という
思いで、両親からチョコレートをもらうと食べるのを我慢し、冷蔵庫の専用
貯蓄コーナーしまっていたそうです(姉妹が食べるのを見ても我慢!)。
1年かけてとうとう13枚。大晦日の紅白歌合戦を見る家族に「食べる」と
宣言し、いざ夢にまで見た一口目のその時、
「そのチョコレート、
と妹の冷たい一言(笑)。でも、板東氏はめげずに全部平らげたそうです。
ご本人曰く「我ながら食い意地の張った子だったと思う」

ま、子供の頃の話とはいえ、微笑ましい話だと思いませんか?
そうそう、私もそういうことあった!という話をさせたら(書かせたら)、
やはり板東氏、上手いです。

時折はいる土佐弁が全体のテンポを良くしているし、文章も読みやすく綺麗
な日本語を使われています。
『死国』の映画見た方も「こんな人が書いてるんだ」という興味でご覧になる
のもいいかもしれませんね。
ホラー苦手でも、板東ファンならずとも面白く読めますよ。


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