『雨晴れて月は朦朧の夜』 夢枕 獏 著 角川ホラー文庫
ああ、夢枕氏はどうしてこんなにビジュアルにも訴えかける漢字を上手く使うのでしょう・・・。ためいき。
いわゆる氏の得意とする、耽美ホラーというか、なんだか深夜の雨のなかで雨音を聞きながら読みたいな・・・と思う作品ばかりの短編集。
この素敵な表題と、お馴染み 天野喜孝氏のイラストにひかれ入手しました。しかし、ホントにぴったりのコンビです。10作品が収録されています。
美しい母と、叔父と、そして主人公のせつなくも妖しい物語の『蛇淫』。酔った主人公がふらりと入り込んだ不思議な骨董屋でもう一度過去の自分を経験した『骨董屋』、チベットの山奥で鳥葬を見て、その記憶と現実のなかで主人公が経験する恐怖の一瞬『鳥葬の山』、風のふきすさぶ音がする山小屋で出会った人間達と主人公。この山小屋はいったい?!『中有堂』、主人公は小さな裸の人形が首筋にキスしているのを目撃するが、その人間は次々に死んでいく・・・『ころぼっくりの鬼』、ある夜、主人公はポルノ映画を見に映画館へ出かけ、淫靡で美しい女性「郁江」と出会う。やがてその体におぼれていくが・・・『おしゃぶりの秘密』、大好きなみちこ叔母さんが留守になった家に招いていた恋人とは?『あやかし』、素敵で哀しい『ふたりの雪』、写真に写った和服の女性の訴えかけるものとは?『1/60秒の女』、「あなの中をのぞいてはいけないよ」『暗い優しいあな』。TORIのお気に入りは、『骨董屋』と『中有堂』です。ちょっと幻想的で近代文学的な匂いのする2作品。
ほかの8作も秀逸ですよー。短編なのでお手軽ですし、ホラーといってもゲロゲロドロドロじゃないので、初心者にも良いでしょう。
秋の夜長に!