『新見南吉童話集』  新見南吉 著、 千葉 俊二 編  岩波文庫

 「新見南吉」と聞いて、さっと『手袋を買いに』が出てくる方はやはり童話がお好きな方でしょうか?

 私は、小学校の低学年まで南吉の故郷である愛知県半田市に住んでいたので、幼い頃は「宮沢賢治」よりも「新見南吉」のほうが有名な作家だと信じていました(笑)。せっせと読まされましたからね。

 彼は、名前よりも作品の方が有名かもしれません。

 生涯を通じて、結局2冊の童話集しか発表しなかったそうです。

 でも、どの作品もあったかくて、コミカルで、時にせつないお話を多く残していますよね。

 有名どころだと『手袋を買いに』、『ごんぎつね』、『おじいさんのランプ』なんかがあります。みなさん「ああ!あれか」とご記憶の方も多いでしょう。

 私は、なんといっても『手袋を買いに』がとびっきりのお気に入り。

 人間をおそれる母ぎつねと無邪気な子ぎつね。

 さむさで可愛そうな坊やのちいさな手に手袋を・・・、と考えた母ぎつねは、片方の手を人間の手に化けさせて「必ずこちらの方の手を出して手袋を下さい」と言うようにさとして町へ向かわせますが、坊やは間違って本当の手の方を差し出してしまいます。

 金貨が本物であることを確かめた店主は、きつねであることを知りつつ手袋を売ってくれます。

 「人間は恐ろしいものだ」と聞かされた坊やは、母ぎつねに正体がばれていたのに手袋を売ってくれたことを話します。

 母ぎつねは思います。

 「本当に人間はいいものかしら?」

 店主の温かさもさることながら、無邪気ゆえの子ぎつねの勇気、疑問に思いつつも「もしかすると人間も悪いばかりじゃないかもしれない」と子ぎつねに知らされた母ぎつね。

 人間ときつね、というともすれば敵対することの方が多い関係で、小さな勇気のおかげでちょっとだけふれあうことのできた物語は舞台が冬だというのに、体もぽかぽかとしてきそうです。

 普段は童話を読まなくなった方も、こんな寒い冬にこそあったかーいお話を選んで読んでみてはいかがでしょうか。

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