『バガージマヌパナス』池上 永一 著 文春文庫
題名は「わが島のはなし」という意味です。沖縄の方言ですね。
帯によると、第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作らしいです。
舞台は石垣島。
仲宗根綾乃はいつもガジュマルの樹の元で、島の風に身を任せ時にはぼんやり煙草をくゆらせたり、オージャーガンマー(大謝さんの次女という意味があります)とおしゃべりすることで毎日を過ごしています。
彼女は働いたり、時間にきちんとしたり、意欲を燃やしたりなんてことは大嫌い。
島を離れた同級生が帰省した折りに、日本(ヤマト)でどれだけ苦労して頑張っているか、島がどんなに遅れているか、などを自慢げに話すのを聞いて、
「島を出たことがそんなに誇らしいのか。あたしはナイチャーグァーシー(日本人の真似)<←内地人ぶる、みたいな意味ですね(TORI注)>をするおまえらなんかに、馬鹿にされたくないよ。島から出て行け。お望みのまま、日本で苦労し続けろ」
と罵声をあびせたりします。
綾乃は島の空気、空、海、風、そしてその独特の時間が大好きです。
でも日本化しつつある周りの人間は、彼女の自堕落な生活ぶりに眉をしかめます。そんな綾乃の一番の友達は、やはり同じく無茶苦茶なオージャーガンマーです。
小さな頃から、綾乃には霊的な力がありました。
沖縄では、先祖崇拝が基本ですので「ユタ」という巫女が今でも生活に密着しているのですが、このグータラな綾乃に「ユタになれ」という神様からの啓示があります。
神をも恐れぬ綾乃は悪知恵と口の悪さで、嫌がりますが何度も天罰が下り、とうとうユタになる決心をします。
「上等さー」とオージャーガンマーはいつも皺だらけの顔で綾乃を助けるのですが・・・。
ラストは、泣けます。
号泣!っていうのではなく、じんわり・・・、でもとても温かい気持ちになれます。そして、哀しい。
登場人物の会話や、風景描写、日々の生活とどこをとっても沖縄らしさがてんこ盛りです。
とくに独特の会話のテンポは、是非味わってみて下さい。
ああ、いい本見つけたなあ・・・。