『ボディ・レンタル』佐藤 亜有子著 河出書房新社
「私の体は誰のものでもない。だったら、誰に貸し与えたっていいわけだ。」
現役の女子大生マヤは、「ボディレンタル」という仕事(?)を自らの意志の元に行っています。
「唇だけでもいい。細い指先でも、足の裏のくぼみでも、性器だけでもいい。私はその材料を提供する、ひとつの無形の物質である。」
ボディ・レンタルと書かれた名刺を男達に(むやみやたらではないのだけれど)差し出し、体を貸し与え報酬をもらう、言うなれば売春なんだけれども、なんだろう?マヤがしていることは「売春」という言葉より「娼婦」という言葉の方が近いかな・・・。 それもぴったりはこない。
最高学府に通い、友人達にも当然この「仕事」のことは話していないマヤですが、体験を「自分の書いている小説」として、その考えや意識を伝えています。なんだか、実験に対するレポートを聞かせられているような気すらしてきます。
彼女のお得意さまには、大富豪のおじいちゃんもいるのですが、彼との関係もなかなか興味深い物があります。
ボディ・レンタルをする中で、彼女は自分をどんどん無機質にしていこうと試みているようです。そんな中、友人の一人「野獣君」と呼ばれるまるで「仙人」みたいな生活を時々送っている青年がいます。
彼のマヤへのコメントは(これは、小説に対して・・・という事ですが、彼はこの小説が実践に基づいたものと気づいています)マヤの信念に常に響いてくるわけですが、物語の最終で彼とマヤは、旅行に出かけます。マヤと野獣君の討論が終わった朝、野獣君はマヤの前から姿を消します、永遠に・・・。それは何故だったのか?その後のマヤがどうなるのかは、本書をお読み下さい。
ただのささくれた時代の無機質な若者の売春物語ではありません。
「生きるとは?」という哲学的な匂いのする青春小説というか、何といったらよいか・・・。
生きている意味って少しは考えた方が苦しいけれど輝けるのかもしれませんね。