『避暑地の猫』 宮本 輝 著 講談社文庫
夏・・・ということで、ご紹介します(笑)。
この作品は、鍋野医師の病院に4ヶ月前に入院してきた「久保修平」が、急患のために軽井沢行きをあきらめかけていた鍋野に「ちょっと長くなるかもしれないけど、俺の話、聞いてくれませんか」と始めた、彼の独白がストーリーとなっています。
軽井沢の布施家の別荘の別荘番として、雇われていた修平の一家。 布施家の主、金次郎はいつも心優しく気遣ってくれる反面、妻の美貴子は修平の一家・・・ことのほか母に辛くあたります。
ある時、修平は布施家の別荘に地下室が存在することを確認します。そして、姉と布施金次郎がその地下室に消えて行くところも・・・。尋ねてみても、姉も、父も、母も全く彼の望む答えを出してくれない、
そんな中、修平は布施喜美子を事故に見せかけて殺します。美しくも悪魔のような女性であった姉、おとなしくて従順であったと思っていた母の背徳、それを知っていながら「約束」のために、耐える父・・・。
やがて、修平は金次郎・母・父を焼き殺してしまうことになります。
執拗に、「真実」を問いただす刑事に彼は父の言葉、
「何があったって、おれは、しらねえ、って言うんだ」
を、守り通します。やがて、この刑事も死に、彼は本当に自由になりますが・・・。
うーーん、全体に「どよ〜ん」とした蒸し暑い空気が流れています。
修平は結果として2つの殺人を行って(あんまり、どちらも直接的ではないのですが)いますし、最後まで「かわいそうな少年、何も知らない息子」を演じきりますが、彼が悪人である印象は全く受けません。
巻末の解説にも少しありますが、ドフトエスキー的な匂いを感じるストーリー展開ですね。「人間の業」とか、「弱さ」とかいろいろ感じるところあり。
ディープな内容の作品であってもさらっと読めてしまうので、さすが宮本 輝!!って感じですね(笑)。なんだか、質の良いミステリーを読んでいるような錯覚を起こしました。