『閉鎖病棟』  帚木 蓬生   新潮文庫

 95年、山本周五郎賞の受賞作です。

ご存じない方のために・・・、「ははきぎ ほうせい」と読みます。

 舞台はとある精神科病棟。登場人物の方言や文中から推測すると作者の出身の福岡県内でしょうか。

 冒頭は、後に出てくる主要人物の過去の物語から始まります。

入院病棟のマドンナ的存在。登校拒否でカウンセリングのために通院している「島崎さん」。

元死刑囚の「秀丸さん」。

それから心優しい「昭八ちゃん」。

 彼らの入院前のエピソードが語られた後、舞台の中心となる「桜病棟」に場面がかわり、そこで生活する3人、それに「チュウさん」とよばれる人物の4人が軸となって、物語の本筋に入ります。

 周囲から(そこには家族も含まれます)遠ざけられながらも、明るく生活する患者達の病棟生活は、「チュウさん」らの視点で描かれ、純粋な彼らの行動に笑い、その優しさに心打たれ、また心ない人々の言動に怒りを覚えながら日常のエピソードが語られます。

 そんな、入院病棟である日殺人事件が起こります。

 かれは何故そんな事件を起こしたのでしょうか?

 読後、「異常」ってなんだろう?と考えました。

 彼らと私たちの違いなんて、ほんの些細なことなんだろうな・・・。

ともすれば、「異常」な心理を持ち合わせているのは、実は病院の外にいる私たちの方ではないのか?という思いにかられました。

 最近は「異常心理犯罪」に関する小説も、ずいぶん沢山出版されています。特に、アメリカの犯罪事件モノが多いですね。マスコミでもこのような、異常犯罪がよく取り上げられます。

 そのせいか「精神病」と聞くと、つい凶悪なモノを想像しがちですが、実はそのような凶悪な犯罪に結びつく患者はほんの一握りのはずなのに、社会全体では精神病患者を「危険な人物」という色眼鏡で見がち。

 この作品に登場する患者は、人を気遣い、目的のために協力し、そして自分の感情に素直です。私たちと同じように泣き、笑い、気分を害します。なんにも変わらないのです。

彼らを異常視するほうが、「異常」なのかもしれませんね。

沢山の事を、考えさせられる一冊です。

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