光合成タンパク質の利用  

光合成タンパク質の光反応中心を太陽電池に応用した研究および量子コンピュータへの応用へのアプローチについて述べます。




 このように光合成タンパク質の光反応中心は光を電子の流れに変換する太陽電池の役割をする酵素であるために順序よく(つまりプラス、マイナスをそろえて直列に)配列することによって電流を効率よく取り出す研究が行われてきました(工業技術院 三宅先生ら、アメリカDuttonら, T.Cottonら)。現在の段階はナノアンペア程度の電流が得られる程度でさらに大きな電流が取り出せるように研究が期待されています。

配列はラングミュアー・ブロジェット法をもちいて積層できることが報告されています。


 このようなデバイスを開発する例としては他に紫膜からとってきたバクテリオロドプシンを用いるものが開発されています。
 タンパク質を分子レベルでのデバイスの構築に応用することはIBMなどによって20年ほど前から提案されてきていたのですが最近やっとタンパク質の構造が明らかになってきたために方法論が進展著しい分野です。 すなわち、20年前ではまだタンパク質の構造がわかっていなかったために、どのように集積化したらよいか、どのようなタンパク質の組み合わせを用いたらよいかはわかってなかったのです。


1997/10/24

御存じかも知れませんが(ac、coドメインの方とかは)光合成タンパク質を量子コンピューターに応用する試みについて論文が出ていました。(私の論文の紹介ではありません。)

分子系超構造における光量子ダイナミックス
-光合成系から分子コンピューターへ
山崎 巌、大須賀 篤弘、三室 守、太田信廣
表面、vol 35, No.8 (1997)

光合成系は光収穫系タンパク質による励起子の移動とそれによる光反応中心での電子移動であるので、1フォトン、1エレクトロンの光スイッチング素子と見なせる。現在電子工学の分野では単一電子トランジスターは、量子ドットを与える孤立ドメインのサイズが大きく、低温でしか作動しない。これに対して光合成系は常温での動作が通常となっている。このことはこのスケールでは半導体素子よりもアドバンテージがあることを意味する。

ここで問題になるのはブール代数をみたす演算をどのようにさせるかであるが、筆者らはここではbiomimeticの考えで合成された分子でそのアイデアの一端を紹介している。すなわち、ポルフィリン(電子供与体)とイミド(電子受容体)を交互につなぎあわせた分子

B1(ポルフィリン)-B2(イミド)-A1(ポルフィリン)-A2(イミド)

である。A部分とB部分は向かい合うようにしてある。

光照射でA部分で選択的に電化分離させ、イオンペアを作っておけば、つぎのB部分の励起に影響を与える。それぞれの励起状態は独立モードでの振動をもつので、時間差をもって振動させれば両者の間で量子干渉がおきるとしている。その結果controlled NOTの量子ゲートが現れるとしている。具体的な実験系では、これら分子を薄膜化し、時間差のあるフェムト秒レーザーを照射することで実現するとしている。

 これらは現在進行中で、フェムト秒レーザーによる時間分解蛍光測定もはじめられているという。

山崎先生は化学vol 52, No.5, 64-65 (1997)に表として、光合成反応中心と単一電子トランジスターの類似性と相違点をまとめている。以下その引用。

相似性

  • 単一電子の輸送をゲートへの信号により制御
  • 電子輸送は量子トンネル効果による
  • 相違点

    光合成反応中心 単一電子トランジスター
    電子移動機構 分子間の電子交換相互作用

    静電エネルギーによる規制

    (クーロンブロッケード)

    電子移動原理における電子の描像 波動性 粒子性
    量子ドット 有機分子 微少な無機結晶
    ゲート機構 1個の励起子による分子の電子励起 ゲート電極への微少な荷電(荷電量は素電荷以下)
    素子サイズ 20 オングストローム 200オングストローム
    動作温度 常温 極低温

    以上


    1997/11/12

    文献の紹介

    Erabi T, Matsumoto K, Fujimura K, Nomura K, Wada M. Generation of Anodic Photocurrent at a Hydroquinonethiol modified Gold Electrode Immersed in Photosybthetic Reaction Center Suspention. DENKI KAGAKU 1997;65(8):673-675.

     光反応中心には可逆に出し入れできるキノンがある。このキノンをあらかじめぬいておいた光反応中心を緩衝液中にけんだくさせておく。ここにこのキノンをSAMで金電極に固定した電極をひたす。すると光反応中心のキノン結合部位が金電極上のキノンをバインディングするので光反応中心が金電極上に一層だけ敷き詰めることができる。

     300 mV電圧をかけたときの光電流を測定すると裸の金電極と比べて2倍程度の電流値の増大が見られている。また、光反応中心のQy帯の吸収スペクトルと類似した電流値の波長依存性(アクションスペクトル)が見られている。このことから、著者らは、光反応中心由来の電子による光電流であると述べている。


    文献

    Yamada H, Hirata Y, Hara M, Miyake J. Atomic force microscopy studies of photosynthetic protein membrane Lnagmuir-Brodgett. Thin Solid Films 1994;243:455-458.

    Alegria G, Dutton PL. I. Langmuir-Blodgett monolayer films of bacterial photosynthetic membranes and isolated reaction centers: preparation, spectrophotometric and electrochemical characterization. Biochim. Biophys. Acta 1991;1057:239-257.

    Alegria G, Dutton PL. II. Langmuir-Blogett monolayer films of the Rhodopseudomonas viridis reaction center: determination of the order of the hemes in the cytochrome c subunit. Biochim. Biophys. Acta 1991;1057:258-272.

    Fang JY, Gaul DF, Chumanov G, Cotton TM. Characterization of Photosynthetic Reaction Centers from Rhodobacter sphaeroides at the Air-Water Interface and in langmuir-Blodgett Films. Langmuir 1995;11:4366-4370.

    Tiede DM. Incorporation of membrane proteins into interfacial films: model membaranes for electrical and structural characterization. Biochim. Biophys. Acta 1985;811:357-379.



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