光収穫系タンパク質複合体の分光学的性質と機能
分光学的性質
光収穫系タンパク質の機能はこの名前のとおり、光を吸収し、励起エネルギーとして集めることです。励起エネルギーは光反応中心に送られて電荷分離に使われます。光収穫系タンパク質がバクテリオクロロフィルと呼ばれる色素を含むことは既に説明しました。ここではその機能面を紅色光合成細菌R. rubrumでのLH-1で述べてみましょう。
吸収スペクトルの特徴
光収穫系タンパク質に含まれるBChlaは有機溶媒系では777 nmに吸収を持ちます。このBChlaはタンパク質中に含まれると下のスペクトルで明らかなように、870 nmに100 nmも長波長シフトします。このことは光収穫系タンパク質に取り込まれ、配列させられることによって、色素が会合しその電子状態が変化した結果であると考えられています。色素が会合している様子は先のページに記述しました。この図では777 nmと870 nmだけでなく820 nmにも吸収帯があります。これが最小構造をとったときのダイマーの吸収スペクトルであると考えられています。このダイマーが会合するすることによってタンパク質複合体の吸収スペクトルがさらに長波長シフトしていると考えられています。これはダイマーが会合してより大きな会合体を作るためです。
このようにBChlaの電子状態を変化させているのは何のためでしょうか?
光収穫系タンパク質から光反応中心への励起エネルギー移動
次の図は紅色光合成細菌の光合成膜を上から眺めた図です。緑のリングは光収穫系タンパク質(LH)、そのなかの黒い線はバクテリオクロロフィルで、この分子は四角形の板に近い形をしており、上からみると線のようになります。オレンジでマークしたものは光反応中心です。光の経路を矢印で示しました。
BChlaの電子状態は色素分子同士が会合することによって長波長側にシフトしています。このことが光を補足し反応中心に転送するのにつごうがよいのです。上の図を見てください。光はLH-2の色素に吸収され、色素間のエネルギー移動によってLH-2の中を通り、系路上にあるLH-2へと移動し、LH-1へと集められます。最終的にはLH-1から光反応中心へと光が送られます。ここで光エネルギー移動は励起エネルギーとして光反応中心に転送されます。ここでBChlaがダイマーに会合することで励起子カップリングすることで極めて速い光エネルギー移動を実現していると考えられています。これらを測定するためには次々と新技術が応用されています。特にレーザー技術の応用が盛んです。
ダイマーの会合体による、より大きな励起子が存在するかどうかについてはまだよくわかっていません。光エネルギーの速度も上に示したような値でまだ正確には決定されていません。psはピコセカンドと読み、10のマイナス12乗秒の単位です。fsはフェムトセカンドとよみ、10のマイナス15乗秒という単位です。このように速いエネルギー移動系を構築することによって、エネルギーの消失を1%以下に抑えています。
このような極めてミクロで精密な光-電子反応を植物は作り上げているのです。人類はようやく自らが作り出した半導体の技術でもって自然界にも半導体そっくりの量子素子が存在することに気がついたのです。
メモ 光化学に詳しい人向け
化学 vol.52 No.7 (1997) pp68-69 垣谷 俊昭先生によると
アンテナ系の励起移動には、弱結合のフェルスター理論では説明できない問題とその理由2点が以下のように述べられています。
1.これらの励起移動が局在化した励起状態と環状にまわっている励起状態の間、あるいは環状に回っているものどうしの間で起こるもので、通常の局在化したものどうしの間で起こるものではない。
2.これらの励起移動の多くは振動緩和の速度と同じかそれよりも速く、競合関係にある。これはダイナミックな中間結合のメカニズムを提示している。
文献
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