3.光合成はどのようにおこなわれているのでしょうか?
3−6.光収穫系タンパク質へのイントロダクション
紅色光合成細菌の光収穫系タンパク質はこれまでに述べてきたように光を集め光反応中心に光を送り込む働きを持っていて、色素がタンパク質に結合しています。
いままでに色素の構造、エネルギー移動、タンパク質の構造など断片的に述べてきたことをまとめていって、光収穫系タンパク質のおおまかな構造について見てみましょう。
【色素部分】
以前述べたように色素はバクテリオクロロフィルが二量体を形成し、さらにこれらが環状構造をとっています(右図)。この環状構造をとりタンパク質に入っているわけです。
ではタンパク質部分はどうなってるのでしょうか?
【アルファヘリックス2量体】
このタンパク質部分の重要な中心部の構造は前回説明したアルファヘリックスをとっています。このアルファヘリックスの部分のアミノ酸残基は20個程度つながっています。図には示していませんがこのアルファヘリックスの両端にもアミノ酸が結合しており全体では60程度のアミノ酸からなっています。ここでは一番重要と考えられるアルファヘリックス部分だけで描きました。また色素部分はLH1とLH2では違いがあり、それは図の下の方LH2のみとかかれた色素(B800と呼ばれる)はLH1には存在しません。この色素は2量体構造をとらず単体で存在しています。
アルファヘリックス1本1本はバクテリオクロロフィルの1分子を結合しています。これまでに色素の2量体が光エネルギー移動に重要だとくり返し述べてきましたが右図に示したようにその2量体は色素を結合したタンパク質が向き合って2量体を形成しています。アルファヘリックス構造をとる光収穫系タンパク質にはアルファ体とベータ体が存在していてそれらがペアになって2量体構造を形成していると考えられています(ヘテロダイマー)。この2種類のタンパク質はおたがいに共有結合していません。ゆるく水素結合で結合しているようです。そして通常タンパク質化学ではアルファヘリックスが集まる時は逆向きになり、ヘリックスのダイポールモーメントを打ち消し合うといわれていますが、この集合体ではN末端C末端がそろってます。この図ではC末端が上にきています。
【色素とタンパク質の結合】
色素とタンパク質との結合部分だけ拡大してみましょう。色素との結合はヒスチジン残基のイミダゾールがマグネシウムへの軸配位子として働くほか、バクテリオクロロフィルの環の置換基とタンパク質のトリプトファンと水素結合していると考えられています。これはラマン分光を用いて確かめられています。ただし水素結合についてはバクテリアごとのタンパク質−色素複合体で異なっているのではないかと考えられているようです。 [Sturgis JN, Olsen JD, Robert B, Hunter CN. Functions of Conserved Tryptophan Residues of the Core Light-Harvesting Complex of Rhodobacter sphaeroides. Biochemistry 1997;36:2772-2778.]
また、光収穫系タンパク質2型の単量体(B800)はヒスチジンのイミダゾールではなくメチオニンのチオエーテルが軸配位しているようです。
【LHタンパク質の形成】
この2量体は右に示すようにさらにおおきな複合体を形成します。全体に環状構造をとり、タンパク質の間に色素が挟まれた構造です。
内側にアルファ体、外側にベータ体がそれぞれ環状をとるように集まっています。
さてここまでのモデル図は今から示すX線構造解析の図からよみとり、わかりやすくまとめたものです。
【LH2のX線構造解析図】
いよいよX線構造解析の図をみてみましょうか。
1995年にイギリスのCogdellのグループにより求められた光収穫系タンパク質II(LH2)のX線構造解析図を真横から見た図を示します。[G. McDermott, S. M. Prince, A. A. Freer, A. M. Hawthornthwaite-Lawless, M. Z. Papiz, R. J. Cogdell, and N. W. Isaacs, Nature, 374, 517-521 (1995).]
この図で黒い部分がタンパク質でラセンを巻いていることがわかります。またバクテリオクロロフィルは緑(B850)あるいは紫(B800)で示されています。緑の方がダイマー構造をとっている方です。そして青い部分はカロテノイドです。
次にこのタンパク質を上から覗き込んでみましょう。丸がアルファヘリックスをあらわしています。上でも述べたように内側はアルファ体、外側はベータ体です。
バクテリオクロロフィルは線に見えます。バクテリオクロロフィルが重なりあって環状に大きく一周していることがわかります。
このように光収穫系タンパク質は色素とタンパク質からなっておりタンパク質も色素部分も大きく環状構造をとっているのです。
上で述べたエネルギー移動を思い出して下さい。この環状の色素を伝ってエネルギー移動が行われているのです。環状構造をとることによりLH-1や光反応中心にエネルギー移動が行われなかった場合光は何度もまわりつづけることになり吸い込んだ光が貯蔵されていることもあると考えられています。
上の色素周りの模式図をLH2のX線構造解析データでもみてみましょう。色素の配列はフレーム表示とCPKモデル表示をしました。色素間の会合具合がよくわかると思います。また色素とタンパク質の相互作用もわかりやすいですね。Hはヒスチジン、Wはトリプトファンです。(2004/7/29加筆)
ところで私の疑問
光は右まわりに流れるのでしょうか?それとも左まわり?それとも等確率なんでしょうか?
だれかしってましたら教えて下さい。
さて今回は光収穫系タンパク質のおおまかな構造を説明しました。まとめておくと、
タンパク質とバクテリオクロロフィルの結合−軸配位と水素結合
光収穫系タンパク質の形状−環状構造
今回のべたのはイントロダクションで、まだまだ、機能やアミノ酸配列、さらに分光学的な特徴など書きたいことがたくさんあります。それら各論は別に章立てして説明する予定です。
第13回おわり
1998/06/17