2.光合成はどこで行われているのでしょうか?

2−2.光合成膜構造と光合成タンパク質の働き

 これらの反応は、前回書いたように膜中のタンパク質で行われています。

まず、この膜の大きな構造から見ていきましょう。

 光合成膜は閉じた軟式テニスボールのような小包体を形作っています。このことは何を意味しているでしょうか?

 膜で区切られることにより外界と内界を作り出すことができます。このため膜は外から原料を補給するとともに光を受け取ることにより化学物質を合成し内界に生産物としてためることができます。このことは膜を介してエネルギーとか物質のやり取りが行われているということでもあります。

 次はもうすこし光合成膜に近寄ってみましょう。

 ここでは植物ではなく光合成細菌の光合成膜で説明します。以外かもしれませんが、光合成ができる細菌もいるのです。この細菌についはしばらく後に述べる予定です。ここでは光合成をして生きるバクテリアでその光合成器官は植物よりも簡単だということを頭に入れておいて下さい。

 下の図を見て下さい。光合成膜の厚さは約50 オングストロームで、膜の表面は水と馴染みやすい性質をもっていて、膜の中心は油の性質を持つ領域を持っています。

 この膜はリン脂質というなじみ深い物質で出来ています。チョコレートあるいは化粧品のなかのレシチンなどがそうです。この脂質による膜構造の発現はまた後日書く予定です。ここでは脂質という分子が50オングストロームのうすいフィルムを作っているとイメージしていただければ結構です。

 このイラストにもあるようにこの膜を貫いて光合成タンパク質が浮くように存在しています。

 上に書いたようにこの膜を介して物質をやりとりするためのエネルギーはこの光合成タンパク質が供給していて、そのエネルギーとは電子の流れで、つまり電流です。光合成タンパク質は光エネルギーを集めて電子にそのエネルギーを注入することにより電子の流れを作り出しているのです。光合成タンパク質は身近にあるシリコンの太陽電池のような働きをしているのです。まさに太陽光発電機です。

 ではこの電流、どのように回路が形成されているのでしょうか?

 下の図にありますように、この電子の流れは

(1)光合成タンパク質を起点(つまりマイナス側)として光合成タンパク質中での膜を介した電子移動がおこります。

(2)膜中での電子の横方向の流れ(これは小さな分子が電子を運んでいる)、

(3)次に左の赤く描いた電子伝達タンパク質による電子の膜を介した流れ。

(4)そして電子伝達タンパク質から起点の光合成タンパク質への電子の返還(プラス側)。

 そして再び光があたるとこの電子は同じ経路で回転するのです。このようにタンパク質により電気回路が形成されているのです。

 この電子伝達効率は大変高いことが知られています。特に光合成タンパク質中での電子移動はほぼ100%であることがわかっています。シリコンの太陽電池の電子移動ではこれは20%程度とされています。

 電流が流れるなんて、いかにもエネルギーの流れですね。ではこの電流からどのように生物エネルギーを取り出しているのでしょうか?それは次回取り上げたいと思います。

さて、コンピュータによくふれているあなたならこのタンパク質をつかって太陽電池ができるのではないか、あるいは電子回路がかけるんではないか、と思うかもしれません。実際それは研究されはじめているのです。それもまた後ほど別のセクションで書きます。

 さて、今週は光合成膜中の説明と光合成タンパク質によってひき起こされる電子の流れについて説明しました。

 次週はこの電子伝達(専門家の言葉です)がどのようにエネルギー変換しているのかATPといわれる物質の合成まで説明する予定です。

 来週(1998/03/27-30)は日本化学会が同志社大学で行われます。残念ながら今回は発表しませんが、新しいネタがありましたら紹介させていただきます。

第三回おわり

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