« test | メイン | 5−1.【管弦楽曲】 »

2003年10月23日

4−1.【管弦楽曲】

《夏風の中で》

題名はウェーベルンの作品の中で一番いい(笑)。夏のそれも午前中のイメージが浮ぶが、ワーグナーの《ジークフリート牧歌》の二番煎じに聴こえてしまう。シェーンベルクに師事する前のウェーベルンの作品であり、まったく別人の作といってもいい。やはり管弦楽では次作《パッサカリア OP1》以降を聴くべきである。言っちゃ悪いが、この曲はなくても特に支障のない曲である。もし買うにしても最後でいい。但し、同じ年に書かれた弦楽四重奏のための作品は面白いと思う。

《パッサカリア ニ短調 OP1》

作品番号のついた管弦楽曲では唯一の調性音楽であり、後期ロマン派、中でもブラームスやワーグナーの影響が感じられる曲である。シェーンベルクに師事した最後の年に書かれたものであり、前記の《夏風の中で》と比べるとシェーンベルクの影響の大きさがわかるであろう。主題に同一音の反復がなく、冷やかな感触などにウェーベルンらしさもみられる。入門用としては一番抵抗がないと思う。

《管弦楽のための6つの小品 OP6》

緊張感の強い音楽である。まず、何をおいてもお聴きなさいということになるが、暗い森の中の不気味な生き物の生態を見ているような音楽である。この曲と《弦楽四重奏のための5楽章 OP5》とは目指しているものが同じような気がする。大管弦楽のための作品ということもあるが、ウェーベルンの音楽の中では、最も衝撃的、暴力的な面が目立つ作品である。家族のいないときにヴォリュームを上げて聴くともう最高!《幻想交響曲》の断頭台への行進のイメージがダブる。

《管弦楽のための5つの小品 OP10》

圧縮様式の管弦楽の傑作。前の曲と同じ書き方になってしまうが、この曲と《弦楽四重奏のための6つのバガテル OP9》とは目指しているものが同じような気がする。また、これは前作《管弦楽のための6つの小品 OP6》の延長線上にあるが、管弦楽の編成が小さくなっている分、すっきりして見透しがいい。完全に視線は未来を見ており、後期につながるものが感じられる。

《交響曲 OP21》

技法上の重要作として戦後の現代音楽家達が注目した傑作であるが、一般に人気のある曲ではない。初演はアメリカでおこなわれたが、爆笑の渦に巻き込まれ、音楽をかき消すほどであったそうだ。交響曲としては確かに短い(10分強)が、もっと短い交響曲だって存在するし、別にコミカルな曲には思えない。強いてあげれば第2楽章のホルンの音型くらいか?この爆笑の原因は私には大きな謎である。

管弦楽の編成は小さく、室内交響曲といった方がいい。また、前期の管弦楽曲に見られた衝撃的、凝縮的な面は完全に影を潜めている。その半面、音数が減ることで透明度は増し、弱音が一段と目立つようになってくる。第一楽章 ソナタ、第二楽章 変奏曲ということであるが、十二音技法の音楽では変奏曲でもどのように変奏しているかがわかりにくい。それを繰返し聴くことで、謎解きをする楽しみが出てくる曲である。

ホルンとクラリネットとハープ、そして引きずるような弦が目立つ。ところどころで逆行形、反行形と思わせるところがあるが、この曲が本当に面白いと思うまで結構時間がかかった。それは、深夜ボリュームを絞って聴いているときに突然やってきた。そしてしばらく中毒になった。

《J・S・バッハ 6声のリチュルカーレ 編曲》

これを編曲した時期は既に後期に入っているので、点描の中に断片がと期待したが、それは最後まで報われなかった。BGMとして聴いていると、バッハで通ってしまうほどである。これは僕の耳に問題ありか?とはいえ、原曲(基準はセオンのレオンハルト、クイケン兄弟達の演奏)に比べ、繊細かつ色彩感も増している。

さる高名な指揮者が編曲した管弦楽編曲版《トッカータとフーガ》を厚化粧の大年増とすると、こちらは若い修道女が初めて化粧をして、鏡を見て少し恥じらいの表情を浮かべているといったところか。

編曲物ではこれが一番成功していると思う。ウェーベルンが他の作曲家の作品を編曲した物はこれ以外にもあるが、自作を編曲したものと比べると、意外と手を入れる範囲が少なく予想外に原曲を尊重していると思う。

《管弦楽のための変奏曲 OP30》

この曲も技法上の重要作として戦後の現代音楽家達が注目した傑作であるが、ウェーベルンはこの曲で音列のみならず、音価(音符や休止符の長さ)にもセリーを使い出した。 繰り返して聴いた。実に主題が短い。こんなに短いの? これだとするとたった2小節、音符もたった4つである。それがわかっても一筋縄ではいかないのが変奏曲である。あれこれ思いを巡らせながら聴くことになる。そういう面があるから飽きない。

管弦楽曲には《弦楽四重奏のための5楽章 OP5》を管弦楽用に編曲したものがあるほか、他の作曲家の作品を編曲したものが10曲以上ある。

MMウェーベルンを語るへもどる

投稿者 iida : 2003年10月23日 22:54

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.greengrape.net/cgi-bin/MT/mt-tb.cgi/852

コメント

コメントしてください




保存しますか?