水野 幹彦(MM) Email mbox@mxr.mesh.ne.jp

・《モーゼとアロン》(PO POCG-1988-9 or DGG 449 174-2)

P・ブ−レ−ズ/ロイヤル・コンセルトヘボウO他

あの筆の速かったシェーンベルクが最後まで書き上げることが出来なかったオペラのCDです。未完ということに抵抗を感じながらも、ブーレーズが2回も録音していることに興味を覚え、ごく最近輸入盤が安かったのでつい買ってしまったものです。英訳を片手に聴いていることもあり、消化不良の部分が多いことは承知のうえで、この作品についての感想を少し述べたいと思います。

 この作品は十二音技法で作曲されたオペラですが、同じ新ウィーン楽派でもベルクのオペラらしい?作品とは異なり、むしろバッハの受難曲のような宗教的なオラトリオとしての性格が強い作品です。男声と合唱が中心のため、色気は微塵もなく華やかさもないので、ある程度の覚悟はいります。しかし、声楽、特に合唱の扱いが変化に富んでおり、管弦楽の絡み方にも工夫が見られ、迫力も十分ありますので、結構聴きどころは随所にあります。

 そして第二幕の最後、モーゼが絶望の中で崩れ落ち−このモーゼはナチスに失望したシェーンベルクではないのか−そこでヴァイオリンの音が引きずるように消えていく部分の美しいこと。この音ははっきりとこの未完の作品の終りを告げています。例をあげれば、ブルックナーの交響曲第9番の第3楽章の終りと同じで、未完ながらももうこれ以上何もいらない、これでいいのだと確信させてくれる音なのです。これには感動しました。新ウィーン楽派の音楽に感嘆することは結構あるのですが、感動したということはあまり記憶にありません。やはりこれは優れた作品、優れた演奏だということでしょうか。

 唯一気になる点と言えば、アロンのマーリットの歌声にヴィブラートがちょっとかかりすぎのよう気がしますが、これは個人の好みの問題でしょう。ただ、間違ってもこの曲から新ウィーン楽派に入門しようなどとは思わないで下さい。いくつかの曲を聴いたうえでこの曲を聴いてこそ面白さがわかるのだと思います。

1999/11/8 掲載

もどる

新ウィーン楽派のページに戻る