ベズレー/Vezelayのタンパン彫刻
その2: キリストの布の表現と使徒の手足のリアリズム
ベズレーのタンパンは素晴らしい技法をもって製作された、というのがここでの主張である。決してロマネスクは下手なテクニックで土着の描き方でキリストの主題を製作したわけではなく、高度な技法を過去の自らの描き方と一致させていったのである。とはいえ、写実的な表現はコミカルな表現とは対立するように今日では考えられる。では実際はどのようにそれらの対立を融合させていったのだろうか?
まずは細かな表現が現れていることを見てみよう。
キリストの腰の渦巻き
これは中央キリストの腰の部分である。布の繊細な表現に感嘆してほしい。さらに腰と左足ひざにあるくるくる渦巻きを見てもらえば明らかなように、衣服の布の単なる写実的な表現に見えていたものはある様式にのっとって文様化されていることがわかる。
このような渦巻き文様が現れているベズレーでの他の例は身廊の柱頭彫刻「神秘の粉挽き」にも見られる。
次にタンパン右手の使徒をクローズアップしてみよう。
使徒の拡大写真(以下二つは山本君撮影 クリックで大きくなります)
ここで中心部を拡大。
ここまでくるとわかるようにかなり緻密に作品が彫られていることがわかる。手の表情、布の流れ方。はじめに向かって右の使徒の本に注目。
手の骨格が解剖学模型のようにきちんと作り込まれている。
次に向かって左の使徒の手。なんと血管まで浮いている。
手がこうなら足はどうか。
うーむ。彼らのデッサン力はすごい。このように緻密な作品はイタリア・ローマに残っていたギリシャ・ローマ彫刻作品をよく見ていたグループがフランスまできて作品を作ったことを示している。さらに、彼らの技法の急速な向上もまた事実なのである。このたかだか100年前にはこの地の技法はこの程度のもの<St. Benigneの地下クリプトの柱頭彫刻>だったのである。
ここまで部分は写実的な表現をとりながら全体はプロポーションが合っていなかったりしているので結果的にコミカルだったりするのである。
2003/4/11 飯田 記