2000/3/30にロマネスク・アーキテクチャーの小倉さんにあいました。

 小倉さんはドイツロマネスクのシュパイヤー大聖堂を研究テーマにしています。

 なぜシュパイヤーか?ということになりますが、私が飲んでいた時のよった頭でも覚えていることは:

 1.シュパイヤーの石は最近ひっくりかえされて石工のサインまで解読されている。

 2.石工の各地の移動が分かってきている。

 3.石の加工年代も決定されているので工事の進行状況も再現されている。

 4.当時の皇帝ハインリヒ四世の命で建設されたので司祭達気合いをいれて当時の工事状況などを記録している。

 そして決定的なものは

 5.東側のファサードをみて、これだと直感したとのこと。

 修士論文をすこし読まさせていただいたのですが、これまで教会として認識されていた建築物にハインリヒ4世(失念しました)の霊廟の性格が建築図像学的に読み取ることができるという骨子でした。建築図像学というのは建築物の形と役割(構造と機能)の観点から形にフォーカスして研究したものという言い方が大雑把な私の理解です。教会に霊廟の性格はないはずなのですが霊廟の形が随所にくまれていて、当時シュパイヤーは誰が見ても霊廟とわかるはずになっていたそうです。たとえばボールトのかかる部分の壁体までくりぬいて外側にギャラリーをならべるとかすると構造面では当然弱くなってくる、にもかかわらずしているのはデザイン上の要請、つまり霊廟として見せる必要が大きかったからだと考えられるわけです。

 ところが、小倉さんが修士論文を提出しさらに研究したけ結果、現在は霊廟としての説明がされなくて18-19世紀には霊廟としては言及されていたことがわかってきたそうで、それはシュパイヤー大聖堂は当時フランスに併合された旧ドイツ領で、当時の政治的プロパガンダに使われていたそうです。となるとシュパイヤーについて皇帝の霊廟の側面から語ることは即ナショナリスト的政治発言になるわけで、どうも第二次世界大戦以降最近ではそれをさけてきたらしいとのこと。シュパイヤー大聖堂についての論文は約2000あるそうです。ですからドイツの研究者は霊廟なのは当たり前だ、霊廟なんだからとかいってしまうらしいのですが、小倉さんの主張は建築図像学的にまだつっこんで研究されていないということです。二重の意味をもつロマネスク教会、それこそロマネスクの雰囲気にぴったりで研究の進展に期待します。くわしくは小倉さんのサイト<ロマネスク・アーキテクチャー>を御覧下さい。

 また、教会の屋根が石のヴォールトで組まれていた理由がいまいち不明とか屋根が焼け落ちやすくてヴォールトがくずれることはしばしばとか、ゴシックになるとロマネスクよりも説明しやすくなってくる、とかゴシックのノートルダム教会なのは都市部にのこっていた地母神をとりこんでいったという説で正しそうで、各地の地母神の異教の性格とノートルダムの形態の整合性についての研究がまとまってきているようですね、とかそういう一般的なロマネスクや中世の話題をしました。

 そしてガウディの話も伺いました。小倉さんはガウディも好きで、いつかそのうちということなのですが、私もガウディには興味があってサグラダファミリアは見に行ったのでいくつか話を聞きました。ガウディのサグラダファミリアは4本のとうもろこし(塔)がたっていますが、これは12使徒になるべくあと8本建設されるはずです。そしてこのとうもろこしのかたちは私の聞いた説明では糸におもりをつけて逆さに釣り下げた時の曲線がエネルギー的に最小になる(変分法、稜線のラグラジアンの変化を最小にする積分方程式をとけばえられるはず)ということで求めたということでしたが、小倉さんの説明によればそれは旧来のゴシックでつかわれていたヴォールトと壁体とフライングバットレスを一体化した形を求めたため、とのこと。そしてさらにそのデザインはイスラムのデザインやモデルニスモへのソリューションでもあったわけで様々な角度からみて全て一級の仕事をしているとのことです。

 もう一つ。私が今の上の話ではガウディーのタイルはりはイスラムの影響なんだ、というと、そうも言えるけど、実はあれは建築家の泣くに泣けない工夫とのこと。ガウディが建てた時はスペインは貧乏になってきたときでタイルが買えないのでガウディはくずをもらってきてつかっていたとのこと。で、そのとき助手が補色の理論をしっていたので多色のタイルをつかえて壁面をおおうことができたそうです。多色のタイルをつかえば一色あたりのタイルの量はへりますからね、廃材を利用するには都合がよいといえます。このように苦難を工夫でのりきり一級の建築をのこしたことに小倉さんはひどくひかれているそうです。もちろんガウディーの建築モチーフにはロマネスク、ゴシック、イスラム、モデルニスモとならべていけばきりがなく今研究するにはもっと広いジャンルの研究をしてからでないと、ということのようです。

 小倉さんにはお忙しい中貴重なおはなしありがとうございました。


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