
1990年9月25日
飯田君だろうか。さて今私はArlesに至った。憶えているだろうか、あの古代闘技場のことを。二年前と同じホテルを取り、古代ローマの場門を見おろす部屋でピンクサーモン、カマンベールチーズ、パンという夕食だ。(ワインではなくブドージュースというのが残念だが)。サン・トロフィーム教会へ行ってみると何と二年前の修復工事がまだ半分終了した段階続行中なのであった。これでは写真をとりに来た甲斐がない。回廊まで修復工事が及んでいないことを祈りつつ、明日はArlesを一日かけてまわる。あさってはいよいよSaint-Gilles-du-Gardである。今回は、SNCFの駅で自転車を借りて行くことにした。Taxiは金がかかって少ししか見られないからね。この手紙が君に届いているのか不安だ。ガイドブックによると3.7Fでいいはずだが。一人旅は意外とさびしいものだな。
1990年9月27日二年ぶりに Saint-Gilles-du-Gard のファサードを目にした感慨、印象は何よりもまず monumentalな規模の壮大さであった。立体として目の前に迫って来る臨場感は到底言い表せない。個々の彫刻装飾は要素として建築という磁力をもった総体を構成するのである。ここに至るまで自転車で二時間かかった。塩潟の散在するカマルグ平原を突切っていくと、はるかかなたに白馬の群が見える。風の吹く先は地中海であろうか。