3 ファサードの図像配置の概観
(タンパンフリーズ/まぐさ連続体)(3)
[30] ノリ・メ・タンゲレ キリスト(左端) [31] ノリ・メ・タンゲレ
マグダラのマリア([30]の中央部分を正面から見た図)
[32] ベタニヤのキリスト [33] 香料を買う三人の聖女 [34] キリストの墓を訪れる三人の聖女 フリーズの下、コーニスの縁石には無気味な姿の爬虫類や野獣がうごめき、これと並んでプロヴァンス地方特有の人面装飾が施されている。人面装飾は古代末期の石棺の隅によく認められるモチーフであるが、もともとは古代演劇の仮面に由来すると考える研究者もいる。[17]
南扉口左隅切りに入ると再び説話的連続性は断続的になる。柱頭に隠された接続部分に位置しているのは『エマオへの道』の場面であると推定され、うね織りのボンネットを被ったキリストらしき人物が二人の使徒の間を歩く様子が描かれている。次の場面はいわゆる『ノリ・メ・タンゲレ』である。[Pls. 30,31]十字の杖を手にしたキリストがヴェールを被った女性と直角をなす形で対置される。しかし、フリーズ・ブロックの異なるこの女性が当初からこの場面に配置されることを意図されていたかどうかは疑わしい。W. ザウアーレンダーが指摘するようにこの女性像、すなわち、マグダラのマリアは通常この場面では考えられない着座の姿勢で表わされている。[18]続く場面は説話的順序からいってかなり不可解なものとされる。従来の学説ではルカ伝7章を典拠としてこれを『シモンの家のキリスト』としてきた。しかし、筆者の考えではこの場面はヨハネ伝12章の記述する『ベタニヤのキリスト』である。[Pl. 32]その論拠については第3章で詳述したい。いずれにせよ、マリア(あるいは罪の女)がイエスの足に香油をつけて自分の髪で拭う説話は受難伝以前に位置している。
南扉口まぐさには復活の朝の二つのエピソードが描かれている。すなわち、『香油を買う聖女達』[Pl.33]と『聖墳墓を訪れる聖女達』[Pl. 34]である。これらの図像と中世の礼拝劇との関係は周知のようにE. マールが言及している。[19]後者には石棺彫刻の影響も指摘されているが、ロマネスクの彫刻家の手はこの主題をより生き生きとしたものにしている。鎖帷子を着た眠る兵士、おどおどしながら鎖帷子が垂れ掛かる石棺の後方にそっとはいっていく聖女達、そして石棺のかたわらに座した壮麗なる天使。これらの構成には見事な均衡がある。天使は手に笏を持ち、ビザンティン風に鋲付きの飾紐をつけた長いダルマティカを着ている。
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