3 ファサードの図像配置の概観
(タンパンフリーズ/まぐさ連続体)(2)
[Pl. 23] 中央扉口タンパン(栄光のキリスト) [Pl. 24] キリスト捕縛(ローマ兵の隊列) [Pl. 25] キリスト捕縛(ユダの接吻) 中央タンパンの四福音記者の象徴を伴う『栄光のキリスト』(マイェスタス・ドミニ)は先述したように17世紀の修復によるものである。[Pl.23] しかし、左隅に断片的に残る獅子については他の粗雑な後補と異なる精密な作風を示すためにオリジナルとみなす意見がある。[14] 右の隅切りは新教徒の破壊から免れた唯一のフリーズである『キリスト捕縛』の場面が占める。[Pls. 24, 25] 左端の部分は、ペテロがマルコスの耳を切り落とすという瞬時の事件をなぞり、中央部分には短いテュニカを着たローマ兵士の行列が松明や棍棒を手にして続く。右端では、鉄兜を被り剣の鞘を手にした兵卒長の厳しい眼差しのもとユダの接吻が行われている(写真左)。その間にも大祭司の僕が激怒に顔をひきつらせてキリストの肩をつかんでいる。ロマネスクの彫刻家は生彩にとんだ人物の表情と密集した群集表現を通じて劇的な一瞬を浮かび上がらせている。
[Pl. 26] 三人の兵士(ペテロの否認) [Pl. 27] カヤパの前に引き出されるキリスト [Pl. 28] 鞭打ち [Pl. 29] 中央扉口右壁 フリーズ全景 隅切りをまわると三人の兵士が現れる。[Pl. 26参照] これらの兵士は明瞭な場面のつながりをもっておらず、人体比例からいっても前場面とは異なる上に、物理的にも別の石板の上にある。彼らはR. ハーマンとJ. F. スコットを除く諸研究では無視されてきた。ハーマンは当初これを次の場面の左端の人物と結び付け、『ペテロの否認』の場面の背景をなすと考えたが後にこれを撤回し、最終的には総督官邸前の歩哨としている。スコットはこれを踏まえた上でレリーフの物理的相違に着目する自説に照らし合わせ、結局ハーマンの前説をとっている。[16]
フリーズは再び前壁に至り受難の有名な三場面を掲げている。『カヤパの前に引き出されるキリスト』[Pl. 27]、『鞭打ち』[Pl. 28]、『十字架を運ぶクレネ人シモン』[Pl. 29参照]である。これらの諸場面の人物像は『キリスト捕縛』の場面と比べるとぐっと数が減り無地の背景から際立ったかなりの高浮き彫りで表される。『カヤパ(ピラト)の前に引き出されるキリスト』が石棺彫刻に由来する図像としてロマネスク彫刻によく見られるとしても、他の二場面が表現されることは稀である。『鞭打ち』の場面ではテュニカを着た二人の刑吏が膝を曲げつつ上半身を傾けてキリストを呵責なく鞭打っており、半裸のキリストは縛り付けられた柱に崩れ伏している。人物像は厳しいリアリズムをもって肉付けされ刑吏の激しい動きはダイナミックに伝わってくる。『十字架を運ぶクレネ人シモン』のフリーズは侵食によりかなり傷んでいるが、ここにも同様の造形的特色を認めることができる。
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2000/8/17 再エディット