2 ファサードの建築的様相の概観(1)
[Pl. 1] [Pl. 2] [Pl. 3] 「使徒達に守られ復活の栄光に燃え盛るこの世ならぬ城壁」(R・ウルセル)と称えられたサン・ジルのファサード[Pls. 1,2]は、かつて数メートルの高さの基段があるが、これは19世紀の後補であり、これより以前にあった半円形の階段も17世紀に作られたものである。ロマネスクの時代には可動式の木製階段が備え付けらていたとする意見もあるがいずれにせよ基檀が部分的に外界に面するように意図されていたことは確かである。[7]
ファサードはフリーズ、コーニスが交互に続く水平で長大な層による構成を持ち、三つの扉口からなっている。ファサードをほぼ二分する主要なコーニスはファサード前壁面をまわり脇扉口へと入り込む。そこではコーニスの線は脇扉口のまぐさの上を走っている。一方、中央扉口においては、まぐさが主要なコーニスの上にある。したがって扉口の開口部の高さは中央扉口が脇扉口よりも高く幅もこれに対応して広い。同様にアーチも中央扉口が脇扉口よりも高く幅もこれに対応して広い。同様にアーチも中央扉口が脇扉口に比して高さと幅があり、アーキヴォルトの支点が高い。こうした寸法に差をつけた三連式扉口構成に多くの研究者たちはプロヴァンス地方に残る古代の凱旋門の影響をみてきた。[8]
しかし、サン・ジルのファサードの場合、これらの寸法の違いに加えて扉口の構造そのものの相違が認められる。すなわち、中央扉口においてアーキヴォルトはタンパンから拡張するように前方へと広がるのに対し、脇扉口(右図)にはタンパンを平面的に枠取るような段差がみられる。[9]
さらに中央扉口が一対の台座付き二重円柱[Pl.3]の突出により、いわば観者に向かってせり出してくるような視覚的印象を与えるのに対し、脇扉口は奥に配された小円柱にみられるような閉ざされた構成体系を示している。いうなればこの構造上の対比は中央扉口を中心とするファサードの構成に立体的な均整美を与えるものであり、ロマネスクの扉口の中でもサン・ジルの著しい特色となっている。12世紀のファサードで数少ない三連扉口形式をとるヴェズレー(*1)、サン・ドニ、シャルトル(*2西正面)と比較してもこうした構造的対比は見い出せない。
*1 ヴェズレーの紹介ページ 飯田記述
*2 シャルトル旅行記 山本君記述
←論文のインデックスページ・(2)ヘ続く→ 参考
サン・ジールのレヴュー(飯田執筆)
ヴェズレーのレヴュー(飯田執筆)