第4章 <<ファサード彫刻の様式的諸相>>

2 作者 <その2> 

 第五の彫刻家はファサード左端の天使ミカエル像[Pls. 44, 88, 89]の作者に擬せられる聖ミカエルの石工(Michael Master)である。躍動感とともに均衡を保った彼の作風はファサード彫刻全体の中でも傑出した質の高さを示す。バランスのとれた遊脚、ひるがえる袖やたわんだ腰帯、明確に分節化された長身のプロポーションにその卓越した手腕がうかがえよう。こうした作風をハーマンはブルゴーニュ的とみなしたが、ストダードはむしろ、ここにサン・ジルの諸様式の総合化を見て取る。ストダードはこの彫刻家がサン・ジルの工房において先任者の助手として養成されたと仮定し、ファサード右端の三天使像にはブルゴーニュ・ロマネスクの洗練された様式が顕著に認められる。すなわち、与えられた枠組一杯に形体を充足させようとする傾向が際立って強いのである。この作品が聖ミカエルの石工の手になるものとするならば、若き日の彼が古代の影響の強いサン・ジルで徒弟修行を積んだとは考えにくいのではなかろうか。ストダードはこの他にも中央扉口のフリーズのいくつかを彼の手に帰しているが、これについては、転用物の問題との関連から検討すべき余地が多い。

 中央扉口側壁に配された四使徒像(ペテロ、ヨハネ、ヤコブ、パウロ)[Pls. 92, 93]については、いずれも手の込んだ複雑な作風を示すため、はっきりとした作者の割り出しは困難である。聖ヤコブと聖パウロに関してはストダードのようにブルヌスの後期様式として説明することも不可能ではないが、確定的な根拠にもとづくとはいいがたい。様式分析のみで特定の個性を決定することの限界は、中世彫刻の場合、常に意識すべきであろう。

2002/1/5

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