<聖ヤコブ教会>
聖ヤコブ教会はロマネスクではないが、非常にユニークであり、かつまた実に素晴しかったので特別にここにつけ加えたい。外観は無骨であり重鈍な感じがするが、中に入ると一転して美の極致を顕す。嬉しい意外性である。ガイドブックにはゴシックと書いてあるが、むしろイスラム風とすべきではなかろうか?
身廊も側廊もなく、あるのは中央にそびえる椰子の木型の柱、そしてそれから伸びる数多くの美しいリブ(画像91)。まさに芸術品である。中央の柱が教会を2分し、内部には大きな構造物はなく体育館のようである。こんな教会はいままで見たことがない。
大きく赤いステンドグラスはむしろ享楽的ですらある(画像92)。
またステンドグラスに聖人像はなく、すべてモザイクデザイン。まさにイスラム風である。13世紀の建築とガイドブックには記載されているのでおそらくスペインでのレコンキスタに伴い多くのイスラム文化が流れ込んだ時期なのだろう。よくこの様な建造物を教会が許したものだ。アベロエスの注釈書を受け入れたような精神がここには存在したのだろう。「薔薇の名前」のあの老人なら許しはしなかっただろうなどたわいもないことを考えてみる。
教会は修道院も兼ねていたようで隣接して回廊がある。ここもまた美しい(画像93)。天井は木製であったが、これはこの地に石材が少ないことによるのだろう。
2本ずつのカラムが整然とならび中央の庭園には糸杉が数本そびえていた(画像95)。
考えてみると教会に茂る実物の糸杉を見るのはこれが初めてではないか? 以前ギリシャのアトス山修道院の写真集で見たすばらしい糸杉を思い出す。
確かセルナン教会のヤコブ像にも糸杉のモチーフがあるとの記載を何処かで読んだ記憶があるが今回確認はしなかった。手元のデジタル画像ではよく判らないが両端の棒状のものである(画像74)。
回廊横にある1室の交差ボルトはより深い構造体で、かっては白い壁地に赤いボルトが美しかっただろう。昔は鮮やかだったに違いない天井も現在は傷みがひどく、いたるところで剥がれ落ちている。また汚れもかなり目立つ(画像94)。もしかすると教会本体もそうであったのかもしれぬ。いかにゴシック様式とはいえ天井が非常に高く暗いので見落とした可能性はある。南仏の明るい太陽をうけて青々と繁る庭木を囲む回廊はすこし修道院には似つかわしくないか?
しかし修道士たちがここで学問や手仕事をするにはなかなか快適な空間であったに違いない。
1999/7/22 by Hiroshi