"F"の音楽レポート
12音音列について
その2
続きとして、Webernのピアノ変奏曲Op27の1番の音列を簡単に分析してみましょう。
ピアノ曲ですので2段譜です。2声の形式をとっています。おおまかに、譜の上段と下段で各声部が書き分けられています。2声部の動きを重視して書かれているため、上下段ともト音記号とヘ音記号が入り乱れています。2声といっても単音で動いている訳でなく、和音も含まれますが、音列の使い方としては2声的です。
冒頭部分をみてみます。
最初に、基本音列がでてきます。この音列の提示の仕方は、Webern得意の鏡像形です。
音を上声と下声に分けて、音を音列の数字で表してみます。テーブルセルは小節です。
| 上 | 1. 2 | 3. | 4. 5. 6. | 6. 5. 4. | 3 | 2 | |
| 下 | 12 | 11. 10 | 9. 8 | 7. 7 | 8. 9 | 10. 11 | 12 |
7音の部分で、鏡に映った様に対称になっていることがわかります。
また、7までで上下あわせて12音が全て出きっていることが分かります。
次に、12音(ここでは音名はH)につながる形で、このHを第12音とした反行の音列、つまりFisが第1音の反行形でのつなぎの部分があらわれます。
この部分も鏡像形ですが、和音の重なりなどで、中心が少しくずれた形の鏡像になっています。
Fisを第1音として数字で表してみます。
| 上 | 1. 2. 3. | 4.5. | 3. 2. 1 | |||
| 下 | 12 | 11. 10. 9 | 8. 7. 6. 6. 7. 8 | 9.10.11 | 12 |
最後の12音(H)は上声へ持っていかれ、そこからつながって最初の音列の逆行形を作ります。
下声は、その逆行(つまり基本音列そのまま)を行きます。これは、カノンの基本技法の1つです。
基本音列の数字で表してみます。
| 上 | 12.11.10 | 9.8.7 | 6.5.4 | 3. 2. 1 | |
| 下 | 1. 2 | 3. 4 | 5.6. 7 | 8.9.10.11 | 12 |
音列の一番最後の音(ときには、11番目と12番目の音)を、次の音列の先頭にする技法はよく見られます。他の形態へと移行する際、スムーズにいくことが出来るからです。
冒頭部分では、基本形態とその一番単純な別形態である基本の逆行が、基本形態と同じようにH音を12番目にもつFisの反行をつなぎに使い、変奏されます。
この曲の小節数は54小節ですが、形態は多彩に変化します。
形態の置換の流れは、以下のとおりになっています。
(注:ドイツ音名は、その形態での開始音を表しています。)
| 1. 基本形態 ( E・順列) | E. | F. | Cis. | Es. | C. | D. | Gis. | A. | B. | Fis. | G. | H |
| 2. Fis・反行 | Fis. | F. | A. | G. | B. | As. | D. | Cis. | C. | Es. | E. | H |
| 3.H・逆行 (基本形態E・順列の逆行形) | H. | G. | Fis. | B. | A. | Gis. | D. | C. | Es. | Cis. | F. | E |
| 4. Fis・反行 | Fis. | F. | A. | G. | B. | As. | D. | Cis. | C. | Es. | E. | H |
| 5.H・反行 | H. | B. | D. | C. | Es. | Cis. | G. | Fis. | F. | A. | Gis. | E |
| 6.F・逆行 (B・順列の逆行形) | F. | Des. | C. | E. | Es. | D. | Gis. | Fis. | A. | G. | H. | B |
| 7.B・逆行 (Es・順列の逆行形) | B. | Ges. | F. | A. | Gis. | G. | Cis. | H. | D. | C. | E. | Es |
| 8.D・逆行の反行 (G・順列の逆行形を反行させたもの) | D. | Fis. | G. | Es. | E. | F. | H. | Des. | B. | C. | Gis. | A |
| 9.Gis・順列 | Gis. | A. | F. | G. | E. | Fis. | C. | Cis. | D. | B. | H. | Es |
| 10. Es・逆行の反行 (Gis・順列の逆行形の反行) | Es. | G. | Gis. | E. | F. | Fis. | C. | D. | H. | Cis. | A. | B |
| 11. Gis・逆行の反行(Cis・順列の逆行形の反行) | Gis. | C. | Cis. | A. | B. | H. | F. | G. | E. | Fis. | D. | Es |
| 12. Gis・逆行 (Cis・順列の逆行形) | Gis. | E. | Es. | G. | Fis. | F. | H. | A. | C. | B. | D. | Cis |
たった54小節の間に、12の形態があります。
このように、音列の面一つ取ってみてもあらゆる可能性があります。
これを展開するだけでなく、曲として構成させる力が必要です。
情動ではなかなか操作しづらい理論です。
長くなりましたが、
1.1つの曲は基本的に1つの音列を基につくられ、その音列を置換する事により
48とおりの形態が生まれること
2.音列の構成音は、順序に沿って奏されること
3.音列の構成音は、曲中1度しか用いることができないのではないということ
は、おわかりいただけましたか?
ここで説明したのは、セリーのなかでも最も基本的な技法ですので、世にあるセリーの名曲がこれを厳格に守っているわけではありません。
例にとったWebernの曲は、一応は基本に則っていますが、果たして例として適切だったかどうか。
分かりづらいと思います。文で説明するのって本当に難しい。
"F"