"F"の音楽レポート
12音音列について
12音音列(セリー)について(基礎編)
12音音列(セリー)は、文字通りオクターブを構成する12個の音から作り出される音列です。
音列の可能性は膨大です。(12!=479,001,600)
技法の規則として、音階のいづれの音も1度しか用いることは出来ないが、これらの音の連続は、作曲者によって自由に選択され、特徴のある音程を生み出します。
これにより、セリーは性格を持つ音階となります。この音列を基本形態として、曲を構築していきます。
セリーの各音は、1度しか用いることが出来ないというのは、「セリーを作るときに」であって、曲中では、セリーの形態は繰り返されるわけなので、音もセリーの繰り返しと共に現れます。
それでなければ、セリーの曲は12音使い切ってしまった時点で終わってしまいます。
セリー音楽では、基本的には曲中で何度も新しい音列を作ることはなく、最初に作ったセリーを基にして一曲を作ります。
一番単純なのは、セリーをそのままの形で、繰り返し使用する方法です。この場合は、音の順序は変わらないわけですから、リズムや音の高さ(同じミでも、高さによって変化させる)、単音にするか和音にするか(和音の場合も、セリーの順序に従って重ねます。)などでしか変化が付かない。それではやはり、単調になります。
それを解決するセリーの理論があります。
「一つのセリーは、”4つの異なった形態”を持っていて、”音列の移置形”が可能である」
”4つの形態”というのは、簡単にいうとセリーの「規則に則った変形」です。
・まずは、最初に作った音列があります。(基本形態 「順」)
・基本の音列を、水平の軸を中心にひっくり返す。つまり、基本で長三度上行している場合は
長三度下行させる。このかたちを”反行形”といいます。(「反行」)
・基本の音列を逆から始める形を、”逆行形”といいます。(「逆行」)
・逆行した音列を、反行形にしたものを、”逆行の反行形”といいます。(「逆・反」)
言葉で説明しても分かりづらいので、実際の音列の4つの形態を提示したいと思います。
音列はA. Webernのピアノ変奏曲Op.27の1番のものです。
本当は5線で示したほうが分かりよいのですが、ドイツ音名で表示します。
シャープ、フラットの異口同音(DisとEsなど)はどちらの場合もあり得ますので、ただの音として捉えてください。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
| 基本(順) | E | F | Cis | Es | C | D | Gis | A | B | Fis | G | H |
| 反行 | E | Es | G | F | As | Fis | C | H | B | D | Cis | A |
| 逆行 | H | G | Fis | B | A | Gis | D | C | Es | Gis | F | E |
| 逆・反 | H | Es | E | C | Cis | D | As | B | G | A | F | Fis |
これで、1つの音列から新たに3つの形態が生まれました。これら、反行や逆行などは、メロディーにおいては古くから頻繁に用いられています。特に、対位法的な音楽においては欠かせない技法です。
音列は、曲自体の主題とはならないのですが(メロディーではない)、単なる音階でもありません。音列を形作る音程や音名の並びに、作者の特徴や話法、あるいは作品全体の構造が内包されています。
音列は、調性音楽のメロディーのように自由に組み替えることは出来ません。
(それはすでに別の音列になってしまうので、当たり前なのですが。)ですからこのように規則に則った置換をします。
また、この4種の形態は、12音のどの音から開始しても良いことになっています。音程関係はそのままですが、開始音を取り替えることによって1つの形態に12個の音列が生まれることになります。
例えば、上の基本形態の第1音をGisとすると、隣接音間の音程はそのままで、音の並びがそれぞれ基本の長3度上になります。
| 基本(順) | E | F | Cis | Es | C | D | Gis | A | B | Fis | G | H |
| Gis 順 | Gis | A | F | G | E | Fis | C | Cis | D | B | C | Es |
つまり、ある音列を作った場合、厳密に規則に沿ったとしても、48通りの形態をもつことになるのです。
この48通りの形態に加え、リズムや音高等の音楽の構成要素があるわけですからですから、1つの音列を作った時点で、作曲者は膨大な可能性を手にするわけです。
そこまで触れるのはたいへんですので、今はこの幾通りもの形態を、1つの曲でどのように使用しているのかという点だけに絞りたいと思います。
その2(1998/7/14ごろ掲載)